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ドリコムさんに「社会人交換留学」してきました

こんにちは。4月からリードエンジニアという肩書になり、会社の技術選択などに一定の責任を持つことになったedvakfです。

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少々前のことになりますが、4月に株式会社ドリコムさんへ「社会人交換留学」として1週間行ってきました。さらにその後ドリコムさんからスーパーRailsエンジニアのonkさんを1週間迎えてピクシブの業務に携わってもらいました。

面白いけどあまりない試みで手探り状態でしたが、やってみると案の定大成功と言えるものとなったと思っています。「社会人交換留学」の事例がもっと増えるように、何が良かったのかを書いてみます。

発端と目的

常に新しい技術を学びたい意欲はエンジニアなら誰でも持っていると思いますが、常に刺激を得られるような取り組みとして社内で短期間だけ別のチームにインターンのような形で行くことを頻繁にやっていけたら、という話を弊社マネージャーのbashさんとしていたところ、bashさんがonkさんとRubyKaigi 2014のパネルディスカッションの楽屋にて同様の話で意気投合したようで、「いっそ交換留学ってどうじゃろ?」「ええやん!」ということになったようです。

参加する身としては、転職せずに他社の様子を見られるこのなど滅多にないですし、願ってもない機会です。しかし考えてみると、会社にとっても生え抜きのリーダー格あたりの人を送り込むと良いことが多いのではないでしょうか。

  • 刺激を与えられる
  • 他社のすごい人と関わってみて、焦りや自信を感じさせることができる
  • 自社のやり方だけでなく他社のやり方を踏まえた判断ができるようになる

といった具合に、主に「文化を学ぶ」ということを目的として両社で承認を得て、NDAなども取り交わした上で社会人交換留学を開催することができました。

留学中にやったこと

文化を学ぶことが目的と言っても、エンジニアとして1週間滞在するわけですから、何か成果を出して来たい気持ちもありました。ドリコムさんでは「Webアーキテクトグループ」という、社内全体の開発基盤やところに参加させていただきました。

最初は特にタスクを与えられたわけではなかったので、pixivで使っている自作デプロイツールのpployを導入してみようと考えました。2日ほどかけて、社内の開発用サーバーをセットアップして社内ツールの一つをデプロイしてみたり、別のサーバーからpploy経由でデプロイしてみたりという試行錯誤をしました。最終的にはpploy導入は諦めたのですが、デプロイやサーバーのセットアップはけっこう会社の独自性が出るところなので、色々知ることができました。あと、初日に社内のcapistranoタスクなどにプルリクして取り込まれたので、「本番にソースコードを残してくる」という目標が早々に達成できて肩の荷が下りるとともに、onkさんのコードレビューの綿密さにビビりました。

ドリコムさんでは社内gemを作ると、エンジニアの会議の「今週のgem」というコーナーで発表することができます。gemを作ったりOSS活動をしたりというのは、社内で広めたいと思ってもなかなか広まりにくいのですが、「今週のgem」というちょっとした承認欲求が満たされる場が足がかりとしてあるのは素晴らしいと思います。初日にその会議にも参加させていただいたので、社内gemを作ることを次の目標にしました。とはいえ限られた時間の中で、一般公開するgemではなく社内gemとして作る意味のあるものは難しいと思い、アイデア勝負で、社内gistであるgistubに投稿する gstb というコマンド(gistに投稿する gist コマンドのようなもの)を作りました。投稿する先のホスト名以外は社外に公開できるように作ってありますが、gem install gstb して設定なしで使えるのが良いので社内gemとして作りました。

3日目からはチームの人にタスクをもらって終わらせることを目標にしました。社内チャットのWebアーキテクトグループ部屋で「仕事くれる人募集」と言って、もらったタスクが「デザイナーさんが画像を git push するとCIが走って、減色されていないPNG画像には警告されるのだけど、git push する前に減色されていない画像を知れるツールがほしい。できればターミナルを開かずにGUIだけで使えると良い」という漠然としたものでした。Rubyが強い会社なのでRubyで書いたり、node-webkitを使ったりして、いくつかプロトタイプを作ってヒアリングしながら試行錯誤しましたが、最終的にはChrome Extensionになりました。人が手動によって頻繁に行っていることをエンジニアリングで解決するのはエンジニア冥利に尽きますし、その後も使って頂いているようで満足です。

そんな感じで色々作り続けた1週間でした。何か成果を出さないと、ピクシブのエンジニアの評判や社会人交換留学という取り組み自体の評価を下げかねないという意識がありましたので、良い緊張感のままいけたと思っています。

社内インタビュー

そんなふうに何かを作る傍ら、ドリコムの色んな人に「どんな仕事をしているんですか?」というインタビューをしていきました。主にエンジニアと管理職の方々に突撃して、30分〜1時間ぐらい時間を取ってもらって、関わっているプロジェクトの歴史や自身の役割について質問していきました。1日2人ほど、合計1時間半ずつぐらいは費やしました。

交換留学をやって良かったことの中でもダントツに良かったのがこの社内インタビューです。外には出てこないけれども会社で「シブい」役割をこなしている人たちにお話を聞ける機会なんて滅多にありません。インタビュー相手の方と自分とonkさんという3人形式でやっていたからなのか、悩みとか抱えている問題点まで聞くこともできたのも良かったです。

ドリコムさんはピクシブに比べると倍以上の規模の会社ですが、そうなると、チームの構成やメンバーの役割などがだいぶ複雑になります。30人以上のチームでうまくスクラム開発をまわしている様子は鳥肌が立つほど圧巻でした。ピクシブも僕が入った3年前に比べると倍近い規模になりましたが、今後を見据える上でも非常に参考になりました。

留学期間

1週間という期間についてですが、業務にガッツリ入って何かタスクをこなすには少々短いですが、結果的にはちょうど良かったと思います。前述のように良い緊張感を保ったままできる期間として、週末を挟まずに月曜から金曜までという期間設定は最適でした。同じ集中力で2週間は難しかったと思います。

1週間なら1週間なりに、2週間なら2週間なりにやれることがありますし、どんな期間設定にしても一長一短です。今回のように文化を学ぶことが主目的である場合であれば留学期間を最初に決めてしまってから内容を探すという方法で良いと思います。逆に、何に携わるかはっきりしているケースであれば、それに合わせて期間を決めると良いかもしれません。

1週間では長すぎると思う方もいるかもしれませんが、1週間がっつり一緒に仕事をして人と話をすることで、相手の良い所だけではなく悪いところも見え始めるという絶妙な期間だったと思います。

留学先での立ち振る舞い

ドリコム社内の方々には積極的に声をかけていくようにしました。朝会で自分の携わっていることや困っていることをみんなに伝えたり、大きめの会議で挨拶をしたり、自分からチームの人に仕事をもらいに行ったり、できるだけ毎日違う人と昼ごはんに行ったり、飲み会に参加したり。

「よくわからない人がよくわからないことをしている」と思われているようではもったいないので、ちょっと厚かましいぐらいのほうが打ち解けやすいのではないでしょうか。(厚かましく感じたドリコムの皆さんには申し訳ありません)

事前周知と人選

社会人交換留学の取り組みのことをできるだけ社内に周知するように心がけました。特に、社内インタビューする予定のマネージャー陣やonkさんと関わるチームの人には早いうちから何度も言っておきました。「大事なことは何度も言う」というのは鉄則です。

その際、「凄い人が来る」と紹介するのがミソです。これによって色んな人に話をしやすくなりますし、前述のようにちょっと厚かましくふるまいやすくなります。

もちろん「凄い人」として行くことになるわけですからプレッシャーもかかりますし、会社としても「凄い人」を一定期間送り出すわけですからそれなりの痛手になるかもしれません。しかし、やはり初回の取り組みとしては「凄い人」がやることで得られるものは非常に多かったです。

KPT

普段の仕事の中で「1週間のふりかえり」の時間を取っている方もいるかもしれません。ピクシブではチームによって、1週間のイテレーションごとに「KPT (Keep Problem, Try)」を話し合うミーティングをしているチームもあります。今回の社会人交換留学でも、自分の留学の最終日とonkさんの留学の最終日に、よかったこと(Keep)、悪かったこと(Problem)、次やるとしたらやりたいこと(Try)を書き出して話し合って再確認しました。

自分の留学時のKeepとして、「マネージャー層を巻き込む」というのが挙げられたので、この準備がしっかりできて良かったです。お互いの留学の間に1週間の間隔を持たせておいたのでTryを反映させやすかったです。

逆に、社内ツールのURLなどを書き出しておいたり、社内チャットなどに前の週のうちから入れるようにしておいたりするべきだったという教訓が得られました。せっかく事前にNDAも締結してあったわけですし、お互いの会社に出向いて挨拶もしてあったので、そこは余計な懸念をするべきではなかったと思いました。

事前に挨拶に出向いて関わりそうな人たちと顔合わせをしておくのは打ち解ける上でとても役に立ちました。

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日報を書く

僕が留学した時のProblemとして、「日報を出してもらえば良かった」というのが挙がりました。ピクシブではesaという社内発信ツールが浸透しているので、onkさんにはesaに毎日の日報を書いてもらいました。かなり力を入れて書いてもらって、とても読み応えのあるポエムになりました。

esaは社内文書共有サービスですが、エンジニアでなくても使いやすいところや、フィードバックがとことん送りやすいのが良く、ピクシブ社内のありとあらゆる人からの「ポエム」が投稿され、pixivや周辺サービスへの熱い想いが綴られたりコメントで議論されたりする場所となっています。esaに日報を書いてもらったことでみんなの目に触れたのも良かったです。

毎日日報を書いてもらうことで、困っていそうなところに早めに気づけて解決することもできました。

文化を学ぶこと

お互いの文化を学ぶことが大きな目的だった今回の社会人交換留学ですが、自分が留学に行っている間だけでなくonkさんに来て頂いている間もたっぷりとドリコムさんの文化を吸収できました。

ピクシブでもonkさん主導で社内インタビューをして、僕自身が聞き手として参加したのですが、同僚の仕事観などをあらためて聞けたのは役得でした。自社のキーパーソン10人に30分〜1時間ずつ話をしていくなんて、考えてみるとかなり貴重な機会です。

また、経験豊富なonkさんがインタビューアーとして鋭い質問をしてくれたのも印象的でした。ピクシブでの社内インタビューはむしろ僕達がonkさんから学ぶことが多かったと思っていますし、それに加えてピクシブという会社ならではの良さを改めて実感したりもしました。

そういう意味でも文化を学ぶという目標は十二分に達成できたと思っています。

まとめ

ピクシブとドリコムさんの社会人交換留学について、交換留学に行った自分の視点から、あらためて何がこの取り組みを成功に導いたのかを考えて綴ってみました。これを読んで興味を持った皆さんも、仲の良い会社に交換留学を持ちかけてみてはいかがでしょうか?日本中のIT業界で色んな人が留学しあうようになったらおもしろいですね。

ドリコムさん側から見た記事はこちら

ピクシブに「社会人交換留学」してきました - onk.ninja