ピクシブのオウンドメディアが大切にしている3つのこと 〜pixiv Spotlightの話
こんにちは。pixiv Spotlight プロダクトマネージャーのikariです。
わたしが担当しているpixiv Spotlightは、ピクシブの「オウンドメディア」です。 2015年は、WEBマーケティングの手法のひとつとして、様々な企業でオウンドメディアに対する注目が集まった年でした。
本日は、pixiv Spotlightというメディアのご紹介と、運営するうえで大切にしている3つのポイントについてお話をさせていただきます。 オウンドメディアを運営している方にとって、本記事が「メディアの価値をどのように定義し、提供していくのか?」を考える材料のひとつとなりましたら幸いです。
pixiv Spotlightとは
2007年の開設以来、pixivにアップロードされた作品の総数は5,000万点を超えました。現在も1日に2万点以上の作品が投稿されています。
pixiv Spotlightは、そのたくさんの投稿作品の中から、様々なテーマに基いて作品を紹介していくメディアです。検索では出会えない隠れた名作や、pixivで話題となっている作品を、pixiv Spotlight編集部がキュレーションし、特集記事の形で発信しています。
最新4〜5件分の記事のサムネイルがpixiv上に表出しており、ここからの流入がpixiv Spotlightへのアクセスの多くを占めます。特集記事は日本語・英語・中国語(簡体字)・中国語(繁体字)の4カ国語に対応しており、ブラウザの言語設定に応じて各国語版で表示されます。
なお、http://spotlight.pics/の月間ページビューは、2015年11月現在、約550万です。これに公式アプリ内のスクリーンビューを合わせると830万を超え、月間アクティブユーザー数は約125万人となっています。
理想的なユーザー体験とプロダクトとしての使命
pixiv Spotlightでは、「pixivに投稿された作品をキュレーションする」という性質上、UXの設計にあたって「記事の読者」「作品の投稿者」の2種類のユーザー像を意識しています。 そして、それぞれのユーザーさんに対し、下図のような体験のサイクルが回ることを理想としています。 ピクシブのプロダクトとしてpixiv Spotlightが負う使命は、
- 記事の読者にとっての価値である「素敵な作品に出会える」
- 作品の投稿者にとっての価値である「作品が注目される(閲覧数・評価・ブックマーク・フォロワーが増える)」
を提供することによって体験のサイクルを回し、
pixivというコミュニティが活性化していくこと
です。
以上を踏まえて、それぞれのユーザーさんに対して価値を提供していくために、pixiv Spotlight編集部が大切にしている点についてご紹介します。
pixiv Spotlightが大切にしている3つのこと
1.「素敵な作品に出会える」を約束する
pixivに投稿された作品は、それ単体でも価値あるものです。しかし、記事にしたときに「素敵な作品に出会える」と感じていただくには、ただ漫然と作品を並べて見せるだけでは不十分です。作品が持つ以上の価値を特集記事に持たせるには、「特集テーマの設定」「人の手による選別・並び替え」すなわち編集を行うことは必須だとわたしたちは考えています。
では、どのように編集すると、価値の高い体験を提供できるのでしょうか? 掲載基準やテクニックについて、この場で具体的にお話することは出来ませんが、抽象的に表現すると「展覧会」を開くように記事を作ることを常に心がけるようにしています。
自分が求めていた切り口のみならず、時には自身では思いつかなかったような切り口のテーマが提示されること。
タイトルやリード文に表現された言葉で想像を膨らませたうえで、主役である作品をひとつひとつ最後まで楽しんで鑑賞できること。
作品を通じて作者を知り、以降も継続して作品を楽しめるようになること。
こうした体験をユーザーさんに繰り返し感じていただき、「pixiv Spotlightで素敵な作品に出会えた」→「pixiv Spotlightを/pixivを、また見に来よう」というサイクルが回っていくことを目指して、記事の構成にこだわっています。
2. 出来る限り多様で、面白いテーマを用意する
pixiv Spotlightがこれまでに公開した記事は累計で750件を超えていますが、まったく同じテーマの記事を第2弾・第3弾と制作することはあまりありません(特に人気のテーマで実施したことはあります)。
理由は2つあります。ひとつは「読み手に対し常に新しい切り口を提供するため」で、これは1でも述べた通り、記事を見てくださるユーザーさんに対する価値提供につながるからです。 もうひとつ、とても大事な理由があります。それは「作品が掲載される機会をたくさん作るため」です。
pixivには、たくさんのユーザーさんが作品を投稿しています。オリジナル作品しか投稿しない方も、二次創作しか投稿しない方もいます。食べ物を美味しそうに描くのが上手な方もいれば、ため息が出るほど美しい背景画を描く方や、とても分かりやすいイラストメイキングを制作している方など、得意分野もさまざまです。
多様な切り口を用意することによって、オリジナル・二次創作を問わず、あらゆる作品を紹介することが可能になります。 そして、出来る限り作品固有の「素敵さ」がより輝くようなテーマの特集内で紹介することが、「素敵な作品に出会える」という価値にもつながります。
当事者の方にはよく理解いただけるかと思うのですが、(わたしを含めて)ものを創る人間は、気持ちの強さ弱さは異なれど「自分の作品を誰かに見てもらいたい」と願っているものです。自分の作品が数万人の人の目に触れて、反応をもらえるという体験は、この先も作品を創り続けていくための大きな力となってくれます。
pixiv Spotlightが、その機会を出来るだけ多くのユーザーさんに提供することは、ピクシブの理念「お絵かきが楽しくなる場所をつくる」の実現ともリンクします。
以上のように、「作品が注目された(閲覧数・評価・ブックマーク・フォロワーが増えた)」→「またpixivに投稿しよう」というサイクルが回っていくうえで、特集テーマをたくさん用意することは非常に重要なのです。
3. 常に期待に応え続ける
シンプルですが、これが最も大事なことです。 なぜなら、「毎日特集記事の発信を続けること」「その記事で期待に応えること」の繰り返しが、見に来てくださるユーザーさんとの信頼関係を築く唯一の方法だからです。
どうやって、1と2を実現しているのか?について、最後にご紹介します。
「『素敵な作品に出会える』を約束する」の実装
pixiv Spotlight編集部が約2年の運営を通じて得た「『展覧会』を開くように記事を作る」ノウハウは、「pixiv Spotlight原稿規定」としてドキュメント化されており、記事制作に関わる人間で共有しています。原稿規定は、特集記事の反響や、編集部のメンバー自身がユーザーとして感じることをフィードバックしながら、常に進化させています。
校正一切不要、という状態にまで全員のレベルを揃えることは難しいですが、気にするべき観点やお手本が示されたうえで記事を作るので、誰が制作してもある程度のクオリティを担保することができます。スタッフは、作った記事に対し、編集長から校正を受けるステップを繰り返すことで、徐々に良い記事を作るスキルを身につけていきます。
また、ドキュメントを作ったことで、記事制作スタッフの増員がしやすくなり、安定的に記事を公開できるようになりました。 (以前は日に1〜2件の更新頻度でしたが、今年の秋に2名スタッフが加わり、平日2件・休日3件に増やすことができました)
「出来る限り多様で、面白い切り口を用意する」の実装
実は、pixiv Spotlight編集部のメンバーは、片手で数えられるほどの人数しかいません。 この少人数体制で、テーマの量と質を担保する強力な手段として機能しているのが「社員によるタレコミ」です。 下の画像はpixiv Spotlightのグループチャットのスクリーンショットです。
ピクシブの社員は、アニメ・マンガ・ゲームを中心としたオタクカルチャーに関心がある人間が多く、人によって趣向はさまざま。その分野が好きな人間だからこそ見つけられるテーマは、多様性と魅力を兼ね備えていることが多いのです。
「社員によるタレコミ」が成立している背景として、ピクシブ社員の高い当事者意識に依る部分は大きいですが、「『好き』だからこそ良いテーマが出せる」「ピクシブ社員みんなを編集部の一員として頼りにしている」というメッセージを、折にふれて社内へ発信することで、参加を促進出来ているのかなと感じています。
ちなみに、いわゆる「タレコミ」である、pixiv Spotlightの投稿フォームに寄せられた特集テーマを掲載させていただくこともあります。こちらも投稿者の方のセンスが光るテーマ設定となっており、頻繁に採用させていただく方もいらっしゃいます。
まとめ
pixiv Spotlightというメディアがどのような使命を負い、いかにしてその価値を実現しているのか、紹介させていただきました。 2016年も、メディアを通じてユーザーさんとの信頼関係を深めていくために、日々頑張っていきたいと思います!
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